[読書会]freezed 2.5.7 翻訳及び補足(How to use / Creating a Model using Freezed)

freezedは、データクラス、ユニオン(合併型)、およびクローニング用のコードジェネレーターです。
これはDartプログラミング言語におけるモデル定義を簡単にするために設計されています。

Note(注釈)
現在、Freezedのマクロを使用した初期プレビュー版が利用可能です。
詳細については、GitHubのリンク https://github.com/rrousselGit/freezed/tree/macros を参照してください。

本ブログの(上記https://pub.dev/packages/freezedの)翻訳および解説の目次頁(構成上のトップページ)は次のURLになります。

また前回記事は、こちらになります。

本頁は、上記(目次)のうちの、「How to use / Creating a Model using Freezed」の章の翻訳および解説頁になります。

目次 index【閲覧時間3分】 click !!>>

2-3.Creating a Model using Freezed(Freezedを使ったモデルの作成)

具体例を通じて説明する方が分かりやすいため、典型的なFreezedクラスの例を示します:

(main.dart)典型的なFreezedクラスの例:
//main.dart
import 'package:freezed_annotation/freezed_annotation.dart';
import 'package:flutter/foundation.dart';

//'main.dart' をFreezedによって生成されるコードと関連付けるために必要
part 'main.freezed.dart';

//次の場合には必要になります
//・@freezed対象クラスがシリアライズ可能時:
//・@riverpod使用時:
part 'main.g.dart';

@freezed
class Person with _$Person {
  const factory Person({
    required String firstName,
    required String lastName,
    required int age,
  }) = _Person;

  factory Person.fromJson(Map<String, Object?> json)
      => _$PersonFromJson(json);
}

上記のコードスニペットでは、Personという名前のモデルが定義されています:

  1. Personは3つのプロパティを持っています:firstName、lastName、age
  2. @freezedアノテーションを使用しているため、このクラスのすべてのプロパティは不変(immutable)です。
  3. fromJsonコンストラクタが定義されているため、このクラスはシリアライズ/デシリアライズ可能です。FreezedはtoJsonメソッドも自動的に追加します。
  4. Freezedによって以下が自動生成されます
    1. 異なるプロパティでオブジェクトをクローンするためのcopyWithメソッド
    2. オブジェクトのすべてのプロパティを列挙するtoStringメソッドのオーバーライド
    3. Personが不変であるため、operator ==hashCodeのオーバーライド

この例から、いくつかのことに気づくことができます。

  • モデルに @freezed (または @Freezed/@unfreezed、詳細は後ほど) の注釈を付ける必要があります。 このアノテーションは、Freez にそのクラスのコードを生成するように指示するものです。
  • クラス名に_$プレフィックスを付けたミックスインを適用する必要があります。このミックスインがオブジェクトのさまざまなプロパティやメソッドを定義します。
  • Freezedクラスでコンストラクタを定義する際には、示されたようにfactoryキーワードを使用すべきです(constはオプショナル)。このコンストラクタのパラメータは、このクラスが含むすべてのプロパティのリストになります。パラメータは必ずしも名前付きや必須である必要はありません。位置パラメータをオプショナルで使用することも可能です!

(1)不変クラスの代わりに可変クラスを定義する

これまでに見てきたように、すべてのプロパティがfinal(最終的)であるモデルを定義する方法を説明しましたが、モデル内で変更可能なプロパティを定義したい場合もあるでしょう。

Freezedでは、@freezedアノテーションの代わりに@unfreezedを使用することで、変更可能なプロパティをサポートします:

@unfreezedを使用することで、変更可能なプロパティをサポートします:
@unfreezed
class Person with _$Person {
  factory Person({
    required String firstName, //→変更可能となる
    required String lastName,  //→変更可能となる
    required final int age,    //←final付与(引き続き不変)
  }) = _Person;

  factory Person.fromJson(Map<String, Object?> json)
      => _$PersonFromJson(json);
}

この定義は以前のスニペットとほぼ同じですが、以下の違いがあります:

firstNameとlastNameは変更可能になりました。そのため、以下のように記述できます:

Dart
void main() {
  var person = Person(firstName: 'John', lastName: 'Smith', age: 42);

  person.firstName = 'Mona';
  person.lastName = 'Lisa';
}

ageは引き続き不変です。これはプロパティを明示的にfinalとしてマークしたためです。
また、このPersonクラスはカスタムの==/hashCode実装を持っていません:

Dart
void main() {
  var john = Person(firstName: 'John', lastName: 'Smith', age: 42);
  var john2 = Person(firstName: 'John', lastName: 'Smith', age: 42);

  print(john == john2); // false
}

もちろん、Personクラスが変更可能であるため、constを使用してインスタンス化することはもはや可能ではありません。これにより、変更可能なフィールドを持つオブジェクトの動的な更新が可能になりますが、不変オブジェクトの一部の利点(予測可能性、スレッドセーフティなど)を失います。

補足) FAQ

Q1.’@freezed’ により、不変性を持たせた、各テーブルの内容は、アプリ実行中、更新することができない、のですよね?

A1.はい、その通りです。@freezed アノテーションを使用すると、生成されるクラスは不変(immutable)となります。これは、クラスのインスタンスが作成された後、そのプロパティを変更することができないことを意味します。つまり、フィールドに final が適用され、値の更新や変更ができなくなります。

アプリ実行中にこれらの不変クラスの内容を「更新」したい場合、既存のインスタンスを変更するのではなく、新しいインスタンスを生成して、必要なプロパティの値を変更して渡す必要があります。Freezed では、このために copyWith メソッドを提供しており、これを使って既存のオブジェクトのコピーを作成し、一部のプロパティだけを新しい値に変更することが可能です。

不変性は、プログラムの予測可能性を高め、バグの発生を防ぐために役立ちますが、アプリケーションの特定の部分で動的なデータ変更が必要な場合には、不変オブジェクトの制限を考慮する必要があります。そのような場合、変更可能なクラスを定義するか、または適切な状態管理ソリューションを使用して、アプリケーションの状態を効率的に管理することが推奨されます。

Q2.でも、その場合、その copyWith メソッドを使って、面倒なコーディングをする作業が増えるのですよね?

A2.はい、その通りです。@freezed を使用して不変クラスを定義する場合、オブジェクトのプロパティを変更するためには、元のオブジェクトを直接変更することはできず、copyWith メソッドを使って新しいオブジェクトのインスタンスを作成する必要があります。このプロセスは以下の点で「面倒」に感じられるかもしれません:

①新しいインスタンスの作成:

copyWith メソッドを通じて新しいインスタンスを生成することは、変更したいプロパティだけを指定して、残りは元のオブジェクトから自動的にコピーされるため、一見効率的ですが、この手法は元のオブジェクトと新しいオブジェクトの両方をメモリに保持することになります。これが大量のデータや頻繁な更新を伴う場合、パフォーマンスやメモリ使用量に影響を及ぼす可能性があります。

状態管理の複雑化:

不変オブジェクトを多用すると、アプリケーションの状態管理が複雑になることがあります。特に大規模なアプリケーションや多くの状態が絡み合う場合、どのオブジェクトが最新かを追跡し、適切に更新するロジックを設計する必要があります。

コーディングの冗長性:

各更新で新しいインスタンスを生成する必要があるため、コードに冗長性が生じることがあります。特に、多くの場所で少数のプロパティを頻繁に更新するようなケースでは、copyWith の呼び出しが多くなり、コードの見通しが悪くなることがあります。

これらの課題に対処するために、状態管理ライブラリ(例えば、Flutterの場合は Provider や Riverpod など)を組み合わせて使用することが推奨されます。これにより、アプリケーション全体での状態の流れと更新の管理が容易になり、コードの保守性や拡張性が向上します。

不変オブジェクトの利用はその安全性と予測可能性から多くの場面で推奨されますが、その運用には適切な設計と工夫が必要です。

Q3.なるほど、Riverpod を組み合わせた場合、
その、不変性のあるテーブルを更新する際の、copyWith を使った面倒なコーディング作業は、
増えない、ということですか?

A3.はい、その通りです。Riverpodなどの状態管理ライブラリを使用すると、不変性を持つデータ構造の更新がより簡単かつ効率的になります。RiverpodはFlutterアプリケーションで状態を管理する際に、データの流れを一元管理しやすくするツールです。これにより、アプリケーションの各部分が必要に応じて状態を読み取り、更新できるようになります。

補足) Riverpodを使用した場合の利点

状態のカプセル化:

Riverpodは、状態をカプセル化したプロバイダを通じて管理します。これにより、特定の状態に対して集中的な操作が可能となり、状態の更新が単純明快に行えます。

更新ロジックの集中管理:

各プロバイダ内に更新ロジックを記述することで、copyWithを使用する際のコードを一箇所に集中させることができます。これは、アプリケーション全体で一貫した更新処理を保証し、バグの発生を抑制します。

UIとの統合:

Riverpodは、FlutterのWidgetツリーと深く統合されており、状態の変更がUIの再描画を自動的にトリガーします。これにより、手動でWidgetを更新する必要がなくなり、開発者は状態管理の複雑さから解放されます

④パフォーマンスの最適化:

Riverpodは必要なときにのみ状態を更新し、関連するウィジェットのみを再描画します。これにより、不必要なリビルドを避け、アプリケーションのパフォーマンスを向上させます。

以下は、Riverpodを使用して不変オブジェクトの状態を管理し、更新する一例です。

Dart
final personProvider = StateNotifierProvider<PersonNotifier, Person>((ref) {
  return PersonNotifier();
});

class PersonNotifier extends StateNotifier<Person> {
  PersonNotifier() : super(Person(firstName: 'John', lastName: 'Doe', age: 30));

  void updateFirstName(String firstName) {
    state = state.copyWith(firstName: firstName);
  }
}

この例では、PersonNotifierを通じてPersonオブジェクトのfirstNameを更新します。この方法で、copyWithメソッドを使う面倒が減少し、コードの可読性と保守性が向上します。

Q4.でも、上記では、開発者が、自分で、copyWith を使ったコードを、書かなくてはならないのですよね?riverpod を使っても、コーディングは楽にはならない、というように、思えるのですが?

A4.その通りです。Riverpodを使っても、copyWithメソッドの使用を完全に排除するわけではありませんが、Riverpodは状態の更新と管理のプロセスを組織化し、効率化する手助けをします。copyWithを使用する際の負担を軽減するために、状態更新のロジックを中央化し、管理しやすくすることが主な目的です。

補足) Riverpodの利点と制約

利点:

  • 自動的なUI更新: 状態が変更されると、関連するUIが自動的に更新されます。これにより、UIと状態の同期を手動で管理する必要がなくなります。
  • 状態の分離と再利用性: 各状態管理ロジックがプロバイダによってカプセル化されているため、状態の再利用性が高まり、テストが容易になります。
  • エラーハンドリングと依存関係の管理: Riverpodは、依存関係の解決とエラーハンドリングを簡単にするツールを提供します。

制約:

  • copyWithの使用: copyWithは不変オブジェクトの一部のプロパティを変更する標準的な手法ですが、これを使うたびに新しいオブジェクトが生成されます。これはメモリ使用とパフォーマンスに影響を与える可能性があります。
  • 学習曲線: Riverpodやその他の状態管理ライブラリを効果的に使用するには、その概念とアーキテクチャに慣れる必要があります。

実用的な解決策

Riverpodを使用している場合、状態更新ロジックをプロバイダ内に集約することで、copyWithの使用が多少なりとも直感的で簡潔になります。プロジェクト全体で状態更新方法が一貫しているため、新しい開発者でもプロジェクトに取り組みやすくなります。

例えば、特定の状態変更が複数の場所で頻繁に発生する場合、それを一つのプロバイダのアクションとして定義し、どこからでもそのアクションを呼び出すことができます。これにより、コードの重複が減少し、メンテナンスが容易になります。

Dart
class UserNotifier extends StateNotifier<User> {
  UserNotifier(User user) : super(user);

  void updateName(String newName) {
    state = state.copyWith(name: newName);
  }

  void incrementAge() {
    state = state.copyWith(age: state.age + 1);
  }
}

この例では、Userの名前と年齢を更新するメソッドがUserNotifier内にキャプセル化されています。これにより、これらのメソッドを使うことで、どこからでも簡単に状態を更新でき、copyWithを直接扱うことなく済みます。

Riverpodを使用することは、状態管理の効率化に役立ちますが、copyWithの使用を完全に排除するわけではありません。
ただし、状態更新のプロセスをより効率的で保守しやすくするための工夫ができます。

(2)Allowing the mutation of Lists/Maps/Sets(リスト/マップ/セットの変更可能性の許可)

デフォルトでは、@freezed (@unfreezed ではない) を使用すると、List/Map/Set タイプのプロパティは不変に変換されます。 これは、次のように記述すると実行時例外が発生することを意味します。

Dart
@freezed //先頭小文字
class Example with _$Example {
  factory Example(List<int> list) = _Example;
}

void main() {
  var example = Example([]);
  example.list.add(42); //→コレクション変更を試みる為、例外を投げます
}

この動作を無効にするためには、以下のようにmakeCollectionsUnmodifiableオプションをfalseに設定します:(@Freezed の様に先頭文字が大文字になっていることに注意

Dart
@Freezed(makeCollectionsUnmodifiable: false) //先頭大文字F
class Example with _$Example {
  factory Example(List<int> list) = _Example;
}

void main() {
  var example = Example([]);
  example.list.add(42); // OK
}

補足) FAQ

Q1.@Freezed(makeCollectionsUnmodifiable: false)は、大変便利だと思う一方で、だったら、最初に、‘@unfreezed’ にしておけばいいのではないか?と思うのですが、どうですか?

A1.@Freezed(makeCollectionsUnmodifiable: false)と@unfreezedは似ているようで実は異なる目的と利用シナリオがあります。それぞれの違いと適切な使用場面を理解することが重要です。

@Freezed(makeCollectionsUnmodifiable: false):

このアノテーションを使用すると、Freezedはデフォルトで不変とされるList、Map、Setなどのコレクション型のプロパティを変更可能にします。しかし、クラス自体は依然として不変の特性を持ちます。つまり、プロパティ自体(数値や文字列など)は変更できませんが、リストやマップ内の要素は変更可能となります。

このオプションは、コレクションが動的に変更されることが多いが、その他のプロパティは不変であるべきというケースで便利です。また、copyWithメソッドを通じてオブジェクト全体の複製や変更を容易にしつつ、コレクション内の要素だけを自由に変更できるようにしたい場合にも適しています。

@unfreezed:

@unfreezedを使用すると、生成されるクラスは完全に変更可能(mutable)になります。すなわち、プロパティ自体も自由に変更が可能です。このアプローチは、オブジェクトの全てのフィールドに対して柔軟性が求められる場合、またはデータモデルが頻繁に変更される可能性がある場合に適しています。

どちらを使用すべきか?

  • @Freezed(makeCollectionsUnmodifiable: false)の使用: クラスのプロパティは基本的に不変で保持しつつ、リストやマップなどのコレクションだけを変更可能にしたい場合に適しています。これにより、オブジェクトの整合性は保たれつつ、コレクション内のデータ構造だけは動的に扱うことができます。
  • @unfreezedの使用: クラスの全プロパティを柔軟に扱いたい、すなわちどのフィールドも後から変更可能にしたい場合に適しています。この設定は、オブジェクトの完全なミュータビリティが必要な場合に利用します。

結局のところ、どちらを使用するかは、アプリケーションの要件やデータモデルの特性に依存します。不変性を部分的に保ちたい場合は@Freezedオプションを、完全な柔軟性を求める場合は@unfreezedを選択すると良いでしょう。

Q2.クラスのプロパティと、リストやマップなどのコレクションとは、なんですか?両者は、何が違いますか?

A2.クラスのプロパティ(属性)とコレクション(リスト、マップ、セットなど)は、オブジェクト指向プログラミングにおいて、データを保持するために使用されますが、役割と構造が異なります。以下にそれぞれの特徴と違いを説明します。

クラスのプロパティ:

クラスのプロパティは、クラスが持つ個々のデータポイントを指します。これらは通常、クラスのインスタンスごとに固有の値を持ち、クラス定義において変数として宣言されます。プロパティは、数値、文字列、ブール値、その他のデータタイプ(他のクラスのインスタンスを含む)を格納することができます。以下は、プロパティを持つ簡単なDartクラスの例です:

Dart
class Person {
  String name; // 名前というプロパティ
  int age; // 年齢というプロパティ

  Person(this.name, this.age);
}

ここで、nameとageはPersonクラスのプロパティです。

コレクション:

コレクションは、複数の要素を一つの単位として管理するデータ構造です。Dartを含む多くのプログラミング言語では、リスト(配列)、マップ(連想配列)、セット(一意の要素の集合)など、さまざまな種類のコレクションが提供されています。コレクションは、同じ型のオブジェクトを多数格納する場合や、キーと値のペアを管理する場合に便利です。例えば:

Dart
List<String> names = ['Alice', 'Bob', 'Charlie']; // 文字列のリスト
Map<String, int> ages = {'Alice': 25, 'Bob': 30, 'Charlie': 35}; // キーと値のマップ
Set<int> uniqueNumbers = {1, 2, 3, 4, 5}; // 重複を許さない整数のセット

プロパティとコレクションの違い:

①データの種類と構造:

  • プロパティは通常、単一のデータポイント(数値、文字列など)を保持します。
  • コレクションは、複数のアイテムまたはキーと値のペアをグループ化して管理します。

②用途:

  • プロパティは、オブジェクトの特性や状態を表すために使用されます。
  • コレクションは、データセットを効率的に管理、操作するために使用され、順序付け、検索、整理が容易です。

③変更可能性:

  • プロパティの変更可能性は、その定義(不変か変更可能か)に依存します。
  • コレクションの変更可能性は、コレクション自体が変更可能かどうか、またはその要素が変更可能かどうかによります(例: Freezedでコレクションの変更可能性を制御)。

このように、プロパティとコレクションはそれぞれ異なる役割と特性を持ち、オブジェクト指向プログラミングにおいて重要な機能を果たします。

(3)How copyWith works( copyWithの動作 )

Freezed パッケージは、Dart でのモデルクラスの定義を容易にするために使用されるツールです。
このパッケージは、変更不可能なオブジェクトを生成し、データクラスのボイラープレートコードを自動的に生成します。
特に copyWith メソッドは、オブジェクトの複製を生成しながらいくつかのプロパティを変更する場合に非常に便利です。
以下に、Freezedを使って Person クラスを定義し、copyWith メソッドをどのように使用するかを説明します。

Dart
@freezed
class Person with _$Person {
  //コンストラクタ定義
  //*ファクトリーメソッド(name,ageフィールドを持つPersonオブジェクトを生成)
  factory Person(String name, int? age) = _Person;
}

このコードでは、@freezed アノテーションを使って Person クラスを定義しています。
このクラスは name(文字列型)と age(整数型でnull許容)の二つのプロパティを持ちます。
with $Person は Freezed の機能をこのクラスに適用するための構文で、これにより裏側で $Person という名前のプライベートな実装クラスが生成されます。

copyWith メソッドを使用すると、既存の Person オブジェクトのプロパティ一部変更した新しい Person オブジェクトを簡単に作成することができます。例えば:

copyWith メソッドを使用すると、既存のオブジェクトのプロパティを一部変更した新しいオブジェクトを簡単に作成することができます。:
void main() {
  //元のPersonオブジェクトを作成
  Person original = Person('Alice', 30);
  
  //copyWithを使用し、名前を'Bob'に変更した新Personオブジェクトを作成
  Person modified = original.copyWith(name: 'Bob');
  
  //結果出力
  print('Original: ${original.name}, ${original.age}'); //出力:Original: Alice,30
  print('Modified: ${modified.name}, ${modified.age}'); //出力:Modified: Bob,30
}

この例では、元々の original オブジェクトの name を ‘Alice’ から ‘Bob’ に変更して、新しい modified オブジェクトを生成しています。age プロパティは変更せずにそのまま継承されています。
これにより、元のオブジェクトを変更することなく、一部のプロパティだけを変更した新しいオブジェクトを安全に作成することができます。

(4)Going further: Deep copy( さらに深い層のコピー )

Freezed パッケージを用いたクラスの定義は、簡単なデータ型だけでなく、複雑なオブジェクトの階層においても非常に便利です。
しかし、オブジェクトが多層にわたる場合、copyWith メソッドを使用する際には注意が必要です。
特に、ネストされたオブジェクト(例えば、会社、そのディレクター、そしてそのアシスタント)を扱う際には、copyWith メソッドだけではディープコピー(完全な個別のコピー)が難しい場合があります。

ここで、Company, Director, Assistant という3つのクラスを定義してみましょう。

Dart
@freezed
class Company with _$Company {
  //Companyクラスの定義( nameはnull許容、directorは必須のパラメータ。)
  factory Company({String? name, required Director director}) = _Company;
}

@freezed
class Director with _$Director {
  //Directorクラスの定義( nameはnull許容、assistantはAssistant型でnull許容。)
  factory Director({String? name, Assistant? assistant}) = _Director;
}

@freezed
class Assistant with _$Assistant {
  //Assistantクラスの定義( nameはnull許容、ageは整数型でnull許容。)
  factory Assistant({String? name, int? age}) = _Assistant;
}

補足) 結論:
各クラスは @freezed アノテーションを用いて定義されており、これにより不変性と一連のユーティリティメソッドが自動的に提供されます。これには、各クラスの copyWith メソッドも含まれますが、ネストされたオブジェクトの場合はシャローコピー(参照のコピー)が行われ、実際のオブジェクトは共有され続けます。これが問題となる場面もあります。
例えば、以下のようなコードで copyWith を用いた場合です。

ディレクターの名前を変更して新しい会社オブジェクトを作成:
void main() {
  //アシスタントを持つディレクターを作成
  Assistant assistant = Assistant(name: 'Charlie', age: 28);
  Director director = Director(name: 'Bob', assistant: assistant);
  
  //ディレクターを持つ会社を作成
  Company company = Company(name: 'Tech Inc.', director: director);

  //ディレクターの名前を変更して新しい会社オブジェクトを作成
  Company newCompany = company.copyWith(
    director: company.director.copyWith(name: 'Robert')
  );

  //結果出力
  print('Original Director Name: ${company.director.name}'); //出力:Original Director Name: Bob
  print('New Director Name: ${newCompany.director.name}'); //出力:New Director Name: Robert
}

このコードでは、company オブジェクトの director の名前だけを ‘Robert’ に変更し、新しい newCompany オブジェクトを生成しています。この場合、assistant オブジェクトは共有されており、新旧の company オブジェクトで同一の assistant インスタンスが参照されます。これがディープコピーの問題点です。もし assistant にも変更を加える場合、さらに copyWith メソッドを使って明示的にコピーを作成する必要があります。

以下は、Freezed パッケージを用いた階層的なオブジェクト構造で copyWith メソッドを使って、最下層の Assistant オブジェクトのプロパティを変更する方法です。
ここでは、Company オブジェクトから Director オブジェクトを経由して Assistant の名前を変更する処理を行います。
以下のコード例で、それぞれのステップに日本語での説明を加えて解説します。

( copyWithで ) 最下層のassistantのnameを変更する:←上層から各層毎にcopyWithを使用している:
//会社のデータを保持する変数 companyを宣言
Company company;
//----------------------------------------------------------------------
//companyオブジェクトの copyWithメソッドを使用して新しい Companyオブジェクトを作成
//----------------------------------------------------------------------
Company newCompany = company.copyWith(
  //directorプロパティの変更を行います。
  director: company.director.copyWith(
    //assistantプロパティの変更を行います。
    assistant: company.director.assistant.copyWith(
      //assistantの nameを 'John Smith' に変更します。
      name: 'John Smith',
    ),
  ),
);
  • 最初の copyWith:
    company オブジェクトの copyWith メソッドを呼び出しています。
    このメソッドは、新しい Company オブジェクトを生成し、変更を加えるプロパティを指定できます。
  • 二番目の copyWith:
    company.director を取得し、その copyWith メソッドを使って Director オブジェクトのコピーを作成します。
    このコピーで assistant プロパティを変更します。
  • 三番目の copyWith:
    company.director.assistant を取得し、その copyWith メソッドを使って Assistant オブジェクトのコピーを作成します。
    このコピーで name プロパティを ‘John Smith’ に変更します。

このプロセスは、オリジナルの company オブジェクトの状態を変更せずに、特定のプロパティだけを変更した新しいオブジェクトを生成するために役立ちます。また、ネストされたオブジェクトでも copyWith を繰り返し使うことで、深い階層のプロパティも安全に変更することが可能です。

以下は、Freezed ライブラリが提供する「ディープコピー」の機能を使うことで、ネストされたオブジェクトのプロパティをより簡潔に変更(Company オブジェクトの Director の Assistant の名前を変更)する方法です。この方法は、Freezed モデルが他の Freezed モデルをプロパティとして持つ場合に、冗長な記述を減らすためのものです。

(「ディープコピー」の機能)最下層のAssistant の名前を変更:copyWithを1度だけ使用している:
//会社のデータを保持する変数 companyを宣言
Company company;

//companyオブジェクトの copyWithメソッドを使用して新しいCompanyオブジェクトを作成
//ここでディープコピーの特殊な記法を使用して、ネストされたプロパティの更新を行います。
Company newCompany = company.copyWith.director.assistant(name: 'John Smith');

copyWith.director.assistant(name: ‘John Smith’):
この記法は、Freezed の特別なディープコピー機能を利用しています。
company オブジェクトの director プロパティの中の assistant プロパティを直接指定し、その name を ‘John Smith’ に変更します。
この方法は、上記のように複数の copyWith メソッドをネストするよりも簡潔で、読みやすいコードを書くことができます。
利点:

  • 冗長性の削減:
    従来の方法では copyWith をネストして呼び出す必要があり、コードが冗長になりがちでした。
    この新しい記法では、一行でネストされたプロパティの変更が可能です。
  • コードの可読性向上:
    パスを直接指定することで、どのプロパティがどのように変更されるかが明確になり、コードが読みやすくなります。

このように、Freezed のディープコピー機能を利用することで、複雑なオブジェクトのプロパティを効率的かつ簡潔に更新することができます。以下は、Freezed の「ディープコピー」機能を使って、さらに複雑なネストされたオブジェクト構造内で特定の属性を変更する方法です。この機能は、異なるレベルのネストされたオブジェクトに対する属性の変更を、単純で直接的な方法で実行することを可能にします。

Dart
//会社のデータを保持する変数 companyを宣言
Company company;

//company オブジェクトの copyWithメソッドを使用して、ディレクターの名前だけを変更する
Company newCompany = company.copyWith.director(name: 'John Doe');

このスニペットは、前のスニペットとまったく同じ結果(アシスタントの名前が更新された新しい会社の作成)をもたらしますが、重複はなくなります。 この構文をさらに深く掘り下げると、代わりにディレクターの名前を変更したい場合は、次のように書くことができます:

Dart
//companyの名前を 'Google'に変更し、
//ディレクター全体を新しいディレクターのオブジェクトで置き換える
company = company.copyWith(name: 'Google', director: Director(...));

//ディレクターの名前を 'Larry'に変更し、
//そのアシスタントを新しいアシスタントのオブジェクトで置き換える
company = company.copyWith.director(name: 'Larry', assistant: Assistant(...));
  • company.copyWith(name: ‘Google’, director: Director(…));
    この構文では、Company オブジェクトの name を ‘Google’ に更新し、director を完全に新しい Director オブジェクトで置き換えます。Director(…) とした部分には、以降(次の行)で新しい Director の属性が指定できます。
    ⇒ company = company.copyWith.director(name: ‘Larry’, assistant: Assistant(…)); ←新しいDirectorが指定できる
  • company.copyWith.director(name: ‘Larry’, assistant: Assistant(…));
    ここでは director の name を ‘Larry’ に変更し、その assistant を新しい Assistant オブジェクトで置き換えます。
    Assistant(…) の部分には新しい Assistant の属性が指定されます。(同上)

このような構文を使用することで、複雑なオブジェクトの属性を簡単に、かつ明確に変更することができます。それぞれの copyWith 操作は、指定された属性のみを更新し、他の属性は元の状態を保持します。これにより、オブジェクトの特定の部分だけを選択的に更新することが容易になります。

null 対応

特に、Company クラスで Director の Assistant が null の場合に、その Assistant の名前を変更しようとすると問題が発生することを指摘しています。これに対する解決策として、オプショナルチェーン(?.)を使用する方法を紹介しています。

初期値 null の属性を変更しようとするとコンパイルエラーになる:
//Company クラスのインスタンスを作成し、director のassistantを nullで初期化します。
Company company = Company(name: 'Google', director: Director(assistant: null));

//company のdirector のassistant の名前を 'John'に変更しようと試みると、
//(assistantが nullなので)操作は無効(コンパイルエラー)になる。
Company newCompany = company.copyWith.director.assistant(name: 'John');

このコードはコンパイルエラーを引き起こします。assistant が null のため、name プロパティにアクセスしようとして失敗します。copyWith メソッドをチェーンする際に assistant が null であると、その後のメソッド呼び出し (name) は無効となります。

問題の解決策:

( ?.call( ) )← nullでない場合にのみcopyWithメソッドを呼び出す
// ?.call() オペレーターを使用する:
//(assistantが nullでない場合にのみ、copyWithメソッドが実行されるようになる)
Company? newCompany = company.copyWith.director.assistant?.call(name: 'John');

?.call() オペレーター :
assistant が null でない場合にのみ copyWith メソッドを呼び出します。
これにより、assistant が null の場合には、そのプロパティを更新しようとする操作をスキップし、エラーを回避します。

newCompany は Company? 型として宣言されています。
これは、assistant が null の場合、newCompany 自体が null になる可能性があるためです。

このような安全なアクセス方法を使うことで、null 可能性のあるプロパティに対してより安全に操作を行うことができ、ランタイムエラーやコンパイルエラーを防ぐことができます。

(5)Adding getters and methods to our models( ゲッターやメソッドの追加 )

Freezed パッケージを使用しているときにモデルクラスに手動でメソッドやプロパティを追加しようとすると問題が生じます。
(Freezed 使用時、クラス定義は自動生成される為、通常の方法でメソッドを追加すると、コンパイルエラーが発生します。)

手動でメソッドを追加できない場合のコード:
@freezed
class Person with _$Person {
  const factory Person(String name, {int? age}) = _Person;

  //このように直接メソッドを追加しようとすると、エラーが発生します。
  void method() {
    print('hello world');
  }
}

このコードはエラーになります。
Freezed で生成される _Person はプライベートクラスであり、Person は実際にはインターフェイスのようなものです。
そのため、Freezed が生成したコードに直接メソッドを追加することはできません。

これを実現するためには、プライベートな空のコンストラクタを追加する必要があると指摘しています。これにより、自動生成される _Person クラスではなく、ユーザーが定義した Person クラスにメソッドを追加することができます。

以下のコード例でこのプロセスを詳細に説明します。

(ユーザ定義クラス側)プライベートな空のコンストラクタを追加する ⇒ これによりメソッド追加が可能になる:
@freezed
class Person with _$Person {
  //プライベートな空のコンストラクタを追加。
  //このコンストラクタはパラメータを持たず、クラスの内部でのみ使用されます。
  const Person._();

  //ファクトリーコンストラクタ(実際のインスタンス生成を _Person に委譲します。)
  const factory Person(String name, {int? age}) = _Person;

  //通常のメソッドを Person クラスに直接追加します。
  void method() {
    print('hello world');
  }
}
  • const Person._(); この行では、Person クラスのためにプライベートなデフォルトコンストラクタを定義しています。このコンストラクタはパラメータを持たず、クラスのインスタンスが外部から直接このコンストラクタを使って生成されることを防ぎます。これにより、クラスの不変性を保ちながら、独自のメソッドやプロパティを追加するための「拡張ポイント」を設けることができます。
  • const factory Person(String name, {int? age}) = _Person; このファクトリーコンストラクタは、引数として名前と年齢を受け取り、それらを用いて _Person クラスのインスタンスを生成します。_Person は Freezed によって自動生成されるクラスで、実際のデータ保持とメソッド実装を担います。
  • void method() { … } ここで Person クラスに直接メソッドを追加しています。このメソッドは Person のインスタンスが作成された後、そのインスタンスに対して呼び出すことができます。

このような設計により、Freezed を使ったモデル定義の柔軟性が高まり、より複雑なロジックや状態管理が可能になります。同時に、Freezed の提供する不変性やその他の機能を維持しつつ、クラスにカスタムの動作を追加できるようになります。

補足)Freezed ライブラリを使用する際に、クラスに独自のメソッドを直接含める方法

上記以外の方法で、Freezed でクラスにメソッドやゲッターを追加するには、プライベートクラス (_Person) ではなくPerson インターフェースにメソッドを実装する拡張 (extension) を使用する、という手段もあります。

拡張( extension ***X on XXX )を追加して、メソッドを追加できる:
@freezed
class Person with _$Person {
  const factory Person(String name, {int? age}) = _Person;
}

//Personクラスに拡張を追加して、メソッドを追加できる
extension PersonX on Person {
  void method() {
    print('hello world');
  }
}

extension PersonX on Person: ここで Person クラスに対する拡張を定義しています。この拡張を通じて、Person インスタンスに追加のメソッドやプロパティを提供できます。

  • void method(): このメソッドは、拡張を通じて Person クラスのインスタンスに追加され、Person インスタンスに対して呼び出すことができます。

この方法により、Freezed の自動生成されるコードの制限を回避しつつ、必要な機能をクラスに追加することができます。このように拡張を利用することで、Freezed で生成されたクラスの機能を柔軟に拡張することが可能です。

(6)Asserts( アサート )

Dartでは、ファクトリーコンストラクタに直接 assert(…) を追加することができません。
そのため、Freezedでは @Assert デコレータを使用してクラスにアサーションを追加する方法を提供しています。

(@Assert文)条件, 表示メッセージ を指定して、データの正当性を確認できる:
class Person with _$Person {
  // 名前が空でないこと、年齢が0以上であることを確認するアサートを追加します。
  @Assert('name.isNotEmpty', 'name cannot be empty') // 名前が空でないことを確認
  @Assert('age >= 0') // 年齢が0以上であることを確認

  // Personクラスのファクトリーコンストラクタ。nameとageをパラメータとして受け取ります。
  factory Person({
    String? name,
    int? age,
  }) = _Person;
}

@Assert(‘name.isNotEmpty, ‘name cannot be empty‘):
このアサートは、name パラメータが空でないことを確認します。
もし name が空だと、‘name cannot be empty’というメッセージと共にエラーが発生します。

@Assert(‘age >= 0‘):
このアサートは、age パラメータが0以上であることを確認します。
このチェックにより、不正な値が年齢として設定されるのを防ぎます

@Assert(‘age >= 0’) アノテーションは、Person クラスのインスタンスが生成される際に age パラメータが0以上であることを確認するためのものです。もし age が0未満であった場合、プログラムは AssertionError を投げて、そのエラーメッセージとして設定された文字列を表示します。

ここでは、@Assert(‘age >= 0’) に特定のエラーメッセージが設定されていないため、エラーメッセージはデフォルトの形式(たとえば「Assertion failed」)で表示される可能性があります。このアサートが失敗すると、プログラムの実行が中断され、Person オブジェクトは作成されません。これにより、プログラム内で無効な値が使用されるのを防ぎます

factory Person(…) = _Person;
ここで定義されているのはファクトリーコンストラクタです。
このコンストラクタは、_Person というFreezedによって自動生成される実装クラスへの橋渡しを行います。
name と age はオプショナルなパラメータですが、アサートを用いて適切な値が設定されていることを保証します。

このように@Assertデコレータを使用することで、データの整合性を保ちつつクラスのインスタンスを生成する際に追加のバリデーションを行うことができます。これは、特にデータの正確性が重要なアプリケーションにおいて非常に有効な手法です。

補足)@Assert について

@Assert は Dart のプログラミング言語における機能で、特定の条件が真であることを確認するために使用されます。
具体的には、クラスのコンストラクタやメソッド内で使われることが多く、プログラムが期待通りの状態で動作しているかチェックするために役立ちます。Freezed ライブラリを使用する際にも、この @Assert アノテーションが役立ちます。

@Assert の使用目的:
データの検証:
 オブジェクトが作成される時、渡されたデータが正しい形式や条件を満たしているかを検証します。例えば、年齢が負の数でない、文字列が空でないなどのチェックがこれにあたります。
プログラムの安全性向上: 条件が満たされない場合にプログラムを停止させ、エラーを投げることで、不正な状態でプログラムが進行するのを防ぎます。
デバッグの容易化:
 エラーが発生した時に、どのような条件で問題が起きたのかが明確になるため、問題の原因を特定しやすくなります。

補足)通常のassert ステートメントの利用方法

Dart において、@Assert アノテーションの使用は Freezed ライブラリなど特定の環境に限られます。
しかし、通常の Dart コードにおいては、assert ステートメントを直接使用して条件をチェックします。
この assert ステートメントは、開発時にプログラムの状態を検証するために用いられ、リリースビルドでは無視されるため、パフォーマンスに影響を与えません。

assert ステートメントの基本的な使い方
このコードでは、数値が特定の条件を満たしているかを検証しています。

Dart
void checkPositive(int number) {
  //assert ステートメントを使って、渡された数値が正であることを確認します。
  //条件が偽の場合、この行でプログラムが停止し、エラーメッセージが表示されます。
  assert(number > 0, 'The number must be positive.');

  print('Passed number is positive.');
}

void main() {
  //正の数を渡して関数をテストします。
  checkPositive(5);

  //負の数を渡して関数をテストします。この場合、assert によってエラーが発生します。
  //リリースモードではこのassertは無視されるため、エラーは発生しませんが、
  //デバッグモードではプログラムは停止し、エラーメッセージが出力されます。
  checkPositive(-3);
}

assert(number > 0, ‘The number must be positive.’); この行では、assert ステートメントが使われています。ここで指定された条件 number > 0 が偽の場合、第二引数である ‘The number must be positive.’ というエラーメッセージがコンソールに出力されます。これにより、開発者は数値が負であることが原因であることをすぐに理解できます。

開発とリリースの違い: assert ステートメントは、デバッグモード(通常、開発中に使用されるモード)でのみ動作します。つまり、リリースビルドでアプリケーションをコンパイルするとき、これらのステートメントは削除され、実行時のパフォーマンスに影響を与えません。

このように、assert ステートメントはプログラムのバグを早期に発見し、修正するのに役立ちます。ただし、これはプログラムの正常なフローをコントロールするためのものではなく、主にデバッグとテストの際に利用されるべきです。

(7)Default values( ファクトリーコンストラクタ用パラメータ初期値設定 )

アサートと同様に、Dart では「ファクトリーコンストラクタのリダイレクト」でデフォルト値を指定することはできません。 そのため、プロパティにデフォルト値を指定する場合は @Default アノテーションが必要になります:

@Default でファクトリコンストラクタの初期値を設定:
class Example with _$Example {
  //@Defaultアノテーションを使用して、valueのデフォルト値を 42に設定します。
  //パラメータを指定しない場合、valueは自動的に 42 として初期化されます。
  const factory Example([@Default(42) int value]) = _Example;
}

@Default(42) int value:
この行で value パラメータにデフォルト値 42 を設定しています。
Example クラスのインスタンスを作成するときvalue パラメータが指定されない場合、自動的に 42 が使用されます。
( つまり単なる値設定ではない!あくまでも初期値ですから! )

NOTE(注釈) シリアライゼーション/デシリアライゼーションとの組み合わせ

もしシリアライゼーション(データの保存や送信のためにオブジェクトを文字列やバイト列に変換するプロセス)やデシリアライゼーション(保存されたデータを再びオブジェクトに戻すプロセス)を使用している場合、@Default アノテーションは自動的に @JsonKey(defaultValue: ) を追加します。
これは JSON データを処理する際に、フィールドが欠けていた場合にデフォルト値を適用するためです。

Dart
import 'package:json_annotation/json_annotation.dart';

part 'example.g.dart';

@JsonSerializable()
class Example {
  //JSON シリアライゼーション時にもデフォルト値が適用されます。
  @JsonKey(defaultValue: 42)
  final int value;

  Example({this.value = 42});

  //JSON シリアライズ/デシリアライズ用のメソッド
  factory Example.fromJson(Map<String, dynamic> json) => _$ExampleFromJson(json);
  
  Map<String, dynamic> toJson() => _$ExampleToJson(this);
}

このコードは JSON シリアライゼーションを考慮した例で、value のデフォルト値を明示的に設定し、JSON データから Example オブジェクトを生成する際にこのデフォルト値を使用します。
これにより、JSON データに value フィールドが含まれていない場合でも、自動的にデフォルト値 42 が適用されます。

(8)Decorators and comments( 修飾とコメント )

Freezed ライブラリを使用するとき、プロパティやクラスに注釈やドキュメントを追加することができます。
これにより、コードの可読性が向上し、保守が容易になります。

①プロパティへのドキュメントの追加

//コメント の書き方:
@freezed
class Person with _$Person {
  const factory Person({
    /// The name of the user.
    /// Must not be null
    String? name,
    int? age,
    Gender? gender,
  }) = _Person;
}

ドキュメントコメント:
name プロパティの前にドキュメントコメントを追加しています。
このコメントは、name がユーザーの名前を表すこと、そして非nullであるべきであることを説明しています。
このようなコメントは、APIのドキュメントとして役立ち、他の開発者がコードを理解するのを助けます。

②プロパティの非推奨化

@deprecated アノテーションで非推奨であることを伝える:
@freezed
class Person with _$Person {
  const factory Person({
    String? name,
    int? age,
    @deprecated Gender? gender,
  }) = _Person;
}

@deprecated アノテーション
gender プロパティに @deprecated アノテーションを追加しています。
これにより、gender プロパティが非推奨であることが示されます。
非推奨とされたプロパティは、以下の場面で警告が出されます

  1. コンストラクタの使用時: Person(gender: Gender.something) で警告。
  2. 生成されたクラスのコンストラクタ: _Person(gender: Gender.something) で警告。
  3. プロパティのアクセス: print(person.gender) で警告。
  4. copyWith メソッドのパラメータ: person.copyWith(gender: Gender.something) で警告。

(9)Mixins and Interfaces for individual classes for union types

ユニオン・タイプのための個別クラスのミキシンとインターフェイス

補足) ユニオンタイプ、ミックスイン、インターフェースについて

ユニオンタイプ: 複数の型1つのクラスで管理する手法
インターフェース、ミックスイン: クラスの機能を追加する手法

同じクラスに複数の型がある場合そのうちのひとつにインターフェイスを実装させたりクラスをミックスさせたりすることができる。 そのためには、それぞれ @Implements デコレータ@With デコレータを使用します。 次の例では、CityはGeographicAreaを実装している。

(インターフェース実装とクラスのミックスインの基本例)シールドクラス と インタフェース:
//抽象クラス(GeographicArea)
//機能: インターフェース
//プロパティのゲッター: population(人口)、name(名前)
abstract class GeographicArea {
  int get population;  //人口
  String get name;  //名前
}

//シールドクラス(@freezed sealed class *** with _$*** {})
//ユニオンタイプの一部として限定された数のサブタイプを持つことが可能
//(2つのファクトリコンストラクタ(Person, City))
@freezed
sealed class Example with _$Example {
  //ファクトリコンストラクタ(1つ目(Person))
  //(これらのプロパティを持つ具体的な実装を提供する必要があります)
  const factory Example.person(String name, int age) = Person;

  //ファクトリコンストラクタ(1つ目(City))
  //こちらも Example クラスのユニオンタイプの一部ですが、
  //Person と異なり City タイプは GeographicArea インターフェースを実装する必要があります。
  //@Implements<GeographicArea>() というアノテーションは、
  //City クラスが GeographicArea インターフェースの要件
  //(この場合は nameと populationプロパティ)を満たしていることを保証するために使用されます。
  //∴Cityクラスは名前と人口を持ち、地理的なエリアとしての役割も果たすことができます。
  @Implements<GeographicArea>()
  const factory Example.city(String name, int population) = City;
}

補足) 二つのファクトリコンストラクタの主な違い

インターフェースの実装:
 Example.city は GeographicAreaインターフェースを実装する為、
 特定のプロパティ(name とpopulation)を持つことが必須です。

 一方、Example.person は単純に Person クラスのインスタンスを生成するだけで、
 特定のインターフェースを実装する必要は無い。

役割と用途:
 Example.person は個人のデータを表し、Example.city は都市のデータを表し、地理的な特性を持つ必要があります。

このように、両者の違いは、主にインターフェースの実装の有無と、それに伴うデータの特性と役割にあります。

補足) Person型とCity型をExampleという一つのクラスで表現しています

@freezedアノテーションを使用して、Exampleクラスを不変(immutable)かつユニオンタイプとして定義しています。
ユニオンタイプとは、複数の形を一つの型で表現できる機能です。
ここではPerson型とCity型をExampleという一つのクラスで表現しています。
@Implementsデコレータを使用することで、CityがGeographicAreaインターフェースの要件を満たすことを強制しています。
これにより、Cityクラスはnameとpopulationの両方のプロパティを持つことが保証されます。

補足) sealed について

sealedは、クラスが密封されていることを示します。
つまり、密封されたクラスは、定義されたモジュールまたはファイル外でサブクラス化することができません。
これにより、特定のクラス階層内でのみ継承が許可され、外部からは拡張ができなくなります
この特性は、アプリケーションの設計をより安全にし、意図しない振る舞いや複雑さを防ぐのに役立ちます。

sealedクラス:
freezed パッケージでは、ユニオンタイプや不変のデータモデルを生成する際に密封クラスのような振る舞いを実現します。
ここでの「sealed」という用語は、生成されたクラスが特定の数の具体的な実装を持ち、それ以外のサブクラス化を防ぐことを意味しています。

sealed クラスの利点:
安全性:
 クラスが限定されたコンテキスト内でのみ拡張されるため、外部からの予期せぬ継承によるエラーを防ぎます。
管理の容易さ:
 クラスの使用が制限されることで、そのクラスとそのサブクラスの振る舞いをより簡単に予測できます。
最適化:
 コンパイラは密封クラスの特性を利用して、パフォーマンス最適化を行うことができます。
 例えば、密封クラスのメソッド呼び出しをより効率的にインライン化することが可能です。

freezed などのライブラリを使用する際には、これらの特性を理解しておくことで、より効果的なコード設計が可能になります。

ジェネリッククラスのミックスインの応用例

これは、AdministrativeArea<House>のようなジェネリッククラスの実装やミキシングにも有効ですが、AdministrativeArea<T>のようなジェネリック型のパラメータを持つクラスを除きます。
この場合、freezedは正しいコードを生成しますが、dartはコンパイル時にアノテーション宣言のロードエラーを投げます。
これを避けるには、@Implements.fromStringデコレータと@With.fromStringデコレータを次のように使用します:

(抽象クラス と シールドクラス(@freezed使用)の定義)インターフェースとそれぞれの特性が指定されています。: しかし具体的な実装が欠けている。:
//抽象クラス
//(パラーメータ: 無し)
// 実装の必要なインターフェースメソッドを定義
abstract class House {
  String get makerName;
  String get makeStyle;
  print("$makerName は$makeStyle 方式で家を建てます");
}
abstract class Shop {
  String get productName;
  double get price;
  void sell();
}
abstract class GeographicArea {
  String get areaName;
  int get populationDensity;
}
//抽象クラス
//(パラメータ: ジェネリック<T>型)
abstract class AdministrativeArea<T> {
  T get areaDetails;
  void manageArea();
}

//シールドクラス(@freezed使用)
//(異なるファクトリコンストラクタを通じて複数のサブタイプを生成する)
@freezed
sealed class Example<T> with _$Example<T> {
  //異なるインスタンス生成
  // Person<T> :
  const factory Example.person(String name, int age) = Person<T>;
  // Street<T> :
  const factory Example.street(String name) = Street<T>;
  // City<T> :
  const factory Example.city(String name, int population) = City<T>;

  //混入(mixin(@With使用))
  @With<House>()
  @With.fromString('AdministrativeArea<T>')

  //実装(@Implements使用)
  @Implements<Shop>()
  @Implements<GeographicArea>()
  @Implements.fromString('AdministrativeArea<T>')
}

//文字列ベースのミックスイン(@With.fromString(対象クラス))を使用する理由:
// Dartがコンパイル時にジェネリック型パラメータを含むアノテーションの宣言で
// ロードエラーを発生させる為。
(各サブクラス)必要な mixin やインターフェースを選択的に実装することで、そのクラスの責任を明確にし、無関係な機能を含めることなく、より効率的なコードを保持することが可能。:
part of 'example.freezed.dart';

//City<T>クラスの具体的な実装を提供(Shop、GeographicArea のみ実装)
@freezed
class City<T> with _$City<T>, House implements Shop, GeographicArea, AdministrativeArea<T> {
  const factory City({String name, int population, String productName, double price, T areaDetails}) = _City<T>;

  @override
  String get productName => 'Sample Product';

  @override
  double get price => 20.0;

  @override
  void sell() {
    print('Selling $productName at $price');
  }

  @override
  String get areaName => name;

  @override
  int get populationDensity => population;

  @override
  T get areaDetails => throw UnimplementedError();

  @override
  void manageArea() {
    print('Managing area with details $areaDetails');
  }
}

//Person<T>(Shop のみ実装)
@freezed
class Person<T> with _$Person<T> implements Shop {
  const factory Person({
    String name, int age, String productName, double price
  }) = _Person<T>;

  @override
  String get productName => 'Personal Item';

  @override
  double get price => 15.0;

  @override
  void sell() {
    print('Selling personal items $productName at $price');
  }
}
//Street<T>(GeographicArea のみ実装)
@freezed
class Street<T> with _$Street<T> implements GeographicArea {
  const factory Street({String name, T areaDetails}) = _Street<T>;

  @override
  String get areaName => name;

  @override
  int get populationDensity => 5000; // 仮の値

  @override
  T get areaDetails => throw UnimplementedError();
}

NOTE1) インターフェースを実装する際に満たすべき要件と、それに関連する具体的なステップ

インターフェースの要件に準拠するためには、定義された抽象メンバーから選択的に機能を実装することが重要です。インターフェースにメンバーがない、またはフィールドのみの場合は、それらをユニオン型のコンストラクタに追加することで、インターフェースコントラクトを満たすことが可能です。さらに、インターフェースがクラスで実装するメソッドゲッターを定義している場合は、それらのメンバーをモデルに追加する手順を踏む必要があります。

このように、選択的な実装を強調することで、実際のシステム設計とコーディングプラクティスの柔軟性を適切に表現し、開発者により正確なガイドラインを提供することができます。

NOTE) @freezedアノテーションを使用する際の重要な制約

( @freezed を付与した )クラスを対象にした@With/@Implements は使用できません。
( @freezed を付与した )クラスは拡張も実装もできません。
(つまり、上記の仕組みは、入れ子にはできない、ということ)

  • @With.fromString(‘AdministrativeArea<T>’)
    ジェネリック型パラメータ T を持つ AdministrativeArea<T> クラスExample.street<T> ファクトリーコンストラクタミックスイン(mixin)するために使用されます。
    Freezed と Dart の型システムの制限により、通常の @With アノテーションではジェネリック型を扱う場合に問題が発生することがあるため、@With.fromString を使用しています。
  • 複合的な装飾:
    Example.city ファクトリーコンストラクタは、House クラスをミックスインし、ShopGeographicArea、そして AdministrativeArea インターフェース実装しています。これにより、City クラスはこれらの機能や要件を組み合わせた複雑な振る舞いを持つことになります。

    @freezed
    class City with _$City, house implements Shop, GeographicArea, AdministrativeArea {
注意点
  • インターフェースの要件: 実装するインターフェースに抽象メンバがある場合、それらをすべて実装する必要があります。また、インターフェースがメソッドやゲッターを定義している場合は、それらをクラス内で適切に定義する必要があります。
  • @With/@Implements の制限: Freezed で生成されるクラスは拡張や実装ができないため、これらのデコレータは直接クラスには適用できませんが、ファクトリーコンストラクタを通じて機能を実現できます。

補足) @With、@Implements について

Dartのプログラミング言語における@Withと@Implementsアノテーションは、特にfreezedパッケージを使う際に役立ちます。
これにより、クラスの機能を拡張したり、インターフェースを実装したりすることができます。

@With アノテーション

@With アノテーションは、あるクラスの機能を別のクラスにミックスインするために使用されます。
ミックスインとは、クラスが別のクラスからメソッドやプロパティを「継承」することなく取り入れることができる機能です。
これにより、多重継承のような機能を実現できます。

以下のサンプルコードでは、Houseクラスの機能をExampleクラスにミックスインする例を示しています。
@Withアノテーションを使用してHouseクラスのメソッドをExampleクラスで利用できるようにします。

@Withを使用してHouseクラスをExampleクラスにミックスインしています:
// Houseクラスは抽象クラスで、地理的な位置情報を引数として受け取り、
// その位置に応じた家の特徴を文字列として返すメソッドを提供します。
abstract class House {
  String getHouseInfo(String location) => "$location: This is a house with unique characteristics.";
}

// Exampleクラスは@freezedアノテーションを使用しており、
// Houseクラスの機能をミックスインすることで、Houseのメソッドを利用できるようにしています。
// Exampleクラスのインスタンスを生成する際には、location情報を指定する必要があり、
// そのlocationを使ってHouseのgetHouseInfoメソッドを呼び出すことができます。
@freezed
sealed class Example with _$Example, House {
  const factory Example.home(String location) = HomeStructure;
}

この例では、withを使用して複数のクラス(Houseクラス)をExampleクラスにミックスインしています。
これにより、ExampleクラスはHouseからgetHouseInfoメソッドを継承し、そのメソッドを使用して家の情報を提供できます。(Exampleインスタンスから直接getHouseInfoメソッドを呼び出すことが可能になります。)

参考) 上記メソッドの呼び出し方:
Dart
void main() {
  //Example クラスのインスタンスを生成
  var myHome = Example.home("123 Main St");

  // 生成されたインスタンスから getHouseInfo メソッドを呼び出す
  String info = myHome.getHouseInfo();
  print(info); // "This is a house with unique characteristics." を出力
}
参考) @Withによるミックスイン対象は、デフォルトコンストラクタのみ

@Withによるミックスイン対象は、デフォルトコンストラクタのみです。
コンストラクタを持つクラスは、対象外として処理されます。
言い換えると、抽象クラス(デフォルトコンストラクタのみ)は、問題なくミックスインされます
そして、具現クラスも(デフォルトコンストラクタのみの場合は)ミックスインされます

では、通常コンストラクタを持ったクラスをミックスインさせたい場合には、どうするのか?
その場合には、コンポジションを利用することになります。

以下、その内容の参考資料です。

参考) コンポジション

コンポジション(合成)は、一つのクラス他のクラスのインスタンスを内部に持ち、その機能を利用するアプローチです。
クラスの再利用を促進し、継承の複雑さを避けるためによく使われます。

コンポジション使用例:
//Utilities: 特定の機能を提供するクラス
//(ここでは単純なメッセージ表示の機能を持っていますが、
// コンストラクタで設定情報(config)を受け取ります)
class Utilities {
  final String config; //設定情報を保持するフィールド

  Utilities(this.config); //コンストラクタで設定情報を初期化

  void printMessage() {
    //設定情報と一緒にメッセージを出力するメソッド
    print("Config: $config, This is a utility method.");
  }
}

//Example: Utilitiesクラスの機能を利用しますが、
//継承ではなくコンポジション(合成)を使います。
class Example {
  final Utilities utilities; //Utilitiesクラスのインスタンスを保持

  //コンストラクタで Utilitiesのインスタンスを生成
  Example(String config) : utilities = Utilities(config);

  void useUtility() {
    //Utilitiesクラスのメソッドを利用する
    utilities.printMessage();
  }
}

//プログラムの実行開始点
void main() {
  var example = Example("ConfigData"); //Exampleクラスのインスタンス作成
  example.useUtility();  //Utilities の printMessage メソッド呼出
  //出力: "Config: ConfigData, This is a utility method."
}

Q1)

final Utilities utilities;
の部分ですが、(わざわざ、このコードで、インスタンスを保持しなくても)以下の、
Example(String config) : utilities = Utilities(config);
のコードさえあれば、インスタンスは生成されるのではないか?

A1)

提供されたコードは技術的に正しく、Utilities インスタンスの生成と利用方法に関して正しい理解を示しています。特に、Example クラスが Utilities クラスのインスタンスを保持する部分について、その目的と機能について説明します。

インスタンスの保持の理由
Example クラスで final Utilities utilities; として Utilities インスタンスを保持しているのは、Example クラスのライフサイクル中ずっとそのインスタンスを使い続けるためです。このような設計は、以下の理由で有効です:

コンポジションの利用: ここでは継承ではなく、コンポジション(合成)を使って Utilities クラスの機能を Example クラスに組み込んでいます。これにより、Example クラスの柔軟性が高まり、Utilities クラスのメソッドを必要に応じて利用できます。

インスタンスの再利用: utilities インスタンスは Example のコンストラクタで一度だけ生成され、その後は useUtility メソッドで何度でもそのインスタンスを使い回すことができます。これにより、新たに Utilities インスタンスを生成するコストを節約できます。

カプセル化の強化: Utilities インスタンスを Example クラス内にカプセル化することで、Utilities クラスの使用が Example クラスによって完全に制御されます。これにより、他のクラスから Utilities クラスが不正に利用されることを防ぎます。

コンストラクタにおけるインスタンス生成
Example(String config) : utilities = Utilities(config); この行で行われているのは、Utilities インスタンスの生成と同時に、それを Example クラスの utilities フィールドに代入することです。これにより、Example クラスの任意のメソッドから utilities インスタンスにアクセスでき、そのメソッドを利用することができます。

結論
このコードは、Utilities インスタンスの生成と管理を効率的に行っており、オブジェクト指向プログラミングの良い例となっています。Utilities インスタンスの保持は必要であり、この設計によって、Example クラスは Utilities クラスの機能を効果的に再利用できています。

Q2)

では、もし、
final Utilities utilities;
を、削除してしまったら、どんな弊害が発生するだろうか?

A2)

final Utilities utilities; の行を Example クラスから削除すると、いくつかの問題や制約が生じる可能性があります。主な弊害を以下に示します。

  1. インスタンスの再利用不可
    utilities インスタンスをクラスレベルで保持しないと、Example クラスの各メソッドが Utilities の機能を必要とするたびに新たにインスタンスを生成する必要があります。これは特に、Utilities のインスタンス生成コストが高い、またはその初期化が複雑な場合にパフォーマンスの低下を招く可能性があります。
  2. 状態の一貫性の喪失
    インスタンスをメソッドローカルで生成する場合、そのインスタンスが持つ状態(この場合は config 情報)はメソッドの呼び出しごとに初期化されます。これにより、Example クラスが Utilities の状態に依存する場合、その一貫性が保たれなくなる可能性があります。例えば、Utilities インスタンスが内部状態を持ち、その状態が複数のメソッド呼び出しで共有されるべき場合、インスタンスを都度生成することで状態がリセットされ、意図しない振る舞いを引き起こすかもしれません。
  3. カプセル化の弱化
    Utilities インスタンスを Example クラスのフィールドとして持つことで、そのインスタンスは Example クラスによって完全に制御され、外部からの不正アクセスや変更から保護されます。インスタンスをクラスフィールドとして持たない場合、その制御が緩くなり、Utilities インスタンスの利用がクラス外部に漏れる可能性があります。
  4. コードの可読性と保守性の低下
    Utilities インスタンスをクラス内で一貫して保持することにより、その使用はクラスの各部分で透明になり、コードの可読性と保守性が向上します。インスタンスを都度生成する場合、それが何をするものか、どのように構成されるかを理解するためには、常にコンストラクタの呼び出しとそのパラメータを追跡する必要があります。

結論
したがって、Utilities クラスのインスタンスを Example クラスで保持することは、多くの場合、効率、一貫性、保守性を高めるために有益です。このアプローチは、オブジェクト指向の設計原則にもよく合致しており、コンポジションを使用する利点を最大限に活かすことができます。

コンポジションの特徴と利点

独立性の保持:
Utilities クラスは独立して存在し、Example クラスによって使用されます。
これにより、Utilities クラスの変更がExample クラスに与える影響を最小限に抑えることができます。

再利用性:
Utilities クラスは他の多くのクラスで同様に使用することができます。
これにより、コードの再利用が促進され、開発の効率が向上します。

拡張性の向上:
新しい機能やメソッドが必要になった場合、Utilities クラスを拡張するか、新しいクラスを作成して Example クラスに追加するだけで対応できます。

コンポジションを選択する状況とは

@With(ミックスインを使用する)や@freezed(不変のデータクラスを自動生成する)のような機能を使う場合には、その特定のユースケースに適している必要があります。
特に、以下のような条件が当てはまる場合、それらを避けてコンポジションを選ぶ方が望ましいです:

1.引数を持つコンストラクタが必要な場合:
 ミックスインや@freezedで生成されるクラスは、基本的に引数なしのデフォルトコンストラクタを期待します。
 引数を必要とするコンストラクタを持つクラスをこれらのツールと共に使用すると、設計が複雑になるか、機能しない可能性があります。

2.クラス間の疎結合が望まれる場合:
 コンポジションを使用すると、各クラスが独立して機能し、必要に応じて他のクラスの機能を利用する形になります。
 これにより、クラス間の結合度を低く保ちながら、柔軟で再利用しやすい設計が可能になります。

3.具体的なクラスの振る舞いがカスタマイズされている場合:
 コンポジションを使用すると、利用するクラスのインスタンスを特定の設定で初期化し、そのメソッドやプロパティを個別に呼び出すことができます。
 これにより、より細かい振る舞いの制御が可能になります。

コンポジションの実装例

先に示したコード例では、UtilitiesクラスのインスタンスをExampleクラスのプロパティとして保持し、そのメソッドをExampleクラスのメソッド内で呼び出す形を取りました。
このアプローチでは、@Withや@freezedは使用せず、必要な機能をExampleクラスに「委譲」しています。

Dart
class Example {
  final Utilities utilities;

  Example(String config) : utilities = Utilities(config);

  void useUtility() {
    utilities.printMessage();
  }
}

この設計は、クラスの責任を明確に分割し、各クラスが一つの役割に集中することを可能にします。
そのため、保守性が高く、拡張が容易なアプリケーションを構築できるでしょう。

このように、ケースに応じて適切な設計パターンを選ぶことが重要です。
状況に応じてミックスイン、データクラスの自動生成、コンポジションなどを適切に使い分けることで、より効果的なプログラムを作成できます。

@Implements アノテーション

@Implements アノテーションは、クラスが特定のインターフェースの要件を満たすことをDartに知らせるために使用されます。
インターフェースは、特定のメソッドやプロパティの「契約」を定義しますが、その具体的な実装は提供しません。

以下のサンプルコードでは、ShopとGeographicAreaという二つのインターフェースをExampleクラスが実装する例を示しています。
これにより、Exampleクラスはこれらのインターフェースに定義されたメソッドを実装しなければなりません。

@Implementsアノテーション利用により、2つの抽象クラスを(@overrideして)実装します。
// Shop と GeographicArea はそれぞれ抽象クラスで、
// 販売行為と地理的位置情報を提供するためのメソッドを定義しています。
abstract class Shop {
  String sell();
}

abstract class GeographicArea {
  String getLocation();
}

// ExampleクラスはShopとGeographicAreaの両インターフェースを実装しています。
// @freezed アノテーションを使用して不変のデータクラスを生成し、
// 各インターフェースのメソッドを具体的に実装しています。
// これにより、Exampleクラスのインスタンスは、商品を販売し、その位置情報を提供することが期待されます。
@freezed
sealed class Example with _$Example implements Shop, GeographicArea {
  const factory Example.shop() = ShoppingCenter;

  @override
  String sell() => "Selling various items.";

  @override
  String getLocation() => "Located in the city center.";
}

この修正されたサンプルは、@Implementsアノテーションの使用法を示し、Dartにおいてクラスが特定のインターフェースをどのように実装すべきかを明確に説明しています。
この方法で、クラスが外部から期待される特定の機能を持つことを保証します。

この例では、ExampleクラスがShopとGeographicAreaのインターフェースを実装しています。
これにより、ExampleクラスはsellメソッドとgetLocationメソッドを提供しなければなりません。

おさらい( @With、@Implements )

@Withと@Implementsを用いて様々なクラスの機能を組み合わせる方法を示し、@freezedアノテーションを使用して不変のデータクラスを生成します。

Dart
//抽象クラス定義
abstract class GeographicArea {
  String getLocation();
}

abstract class House {
  String getHouseInfo();
}

abstract class Shop {
  String sell();
}

abstract class AdministrativeArea<T> {
  T getDetails();
}

//@freezed アノテーションを用いて、さまざまな機能をクラスにミックスインし、
//インターフェースを実装するクラス Exampleを定義。
@freezed
class Example<T> with _$Example<T> {
  //パーソンの情報を持つファクトリコンストラクタ
  const factory Example.person(String name, int age) = Person<T>;

  //文字列ベースでAdministrativeArea<T>をミックスインするファクトリコンストラクタ
  @With.fromString('AdministrativeArea<T>')
  const factory Example.street(String name) = Street<T>;

  //House をミックスインし、Shop と GeographicAreaのインターフェースを実装、
  //さらに AdministrativeArea<T>も文字列ベースで実装するファクトリコンストラクタ
  @With<House>()
  @Implements<Shop>()
  @Implements<GeographicArea>()
  @Implements.fromString('AdministrativeArea<T>')
  const factory Example.city(String name, int population) = City<T>;
}

1.クラスの定義:

  • GeographicArea, House, Shop, AdministrativeArea はすべて抽象クラスで、それぞれ異なるメソッドを定義しています。
    これらは他のクラスによって実装されるインターフェースのように機能します。

2.@freezedの使用:

  • @freezedアノテーションは、データの不変性を保証しながら、複数のファクトリコンストラクタを持つクラスを定義する際に使用されます。これにより、異なる構成のオブジェクトを柔軟に生成できます。

3.ミックスインとインターフェースの実装:

  • @With() と @With.fromString(‘AdministrativeArea’) は、House と AdministrativeArea の機能をそれぞれのファクトリコンストラクタで使えるようにします。これにより、これらのクラスが提供するメソッドにアクセスできるようになります。
  • @Implements() と @Implements() は、これらのインターフェースが要求するメソッドの実装をクラスに強制します。
    これにより、ExampleクラスはShopとGeographicAreaの機能を提供する必要があります。

このように、@freezed、@With、@Implementsを組み合わせることで、複雑なデータ構造と機能の組み合わせを効果的に実装し、さまざまなユースケースに対応する柔軟なクラスを作成できます。

補足) Dart でのインターフェース実装における留意点

①インターフェース要件の遵守

抽象メンバーの実装:
Dartでは、インターフェース(通常は抽象クラスとして表現される)は抽象メソッドやプロパティ(ゲッターやセッター)を含むことができます。これらのメンバーは、インターフェースを実装するクラスで必ず実装する必要があります。すべての抽象メンバーを実装することで、インターフェースの契約(コントラクト)に準拠することが保証されます。

②インターフェースがメンバーを持たない場合

フィールドの追加:
インターフェースがメソッドやゲッターを持たず、フィールドのみを定義している場合、これらのフィールドはユニオンタイプ(複数の型を一つの型で扱うことができるクラス)のコンストラクタに追加することで、インターフェースの要件を満たすことができます。これにより、インスタンスが作成される際に必要なデータをすべて含めることができます。

③メソッドやゲッターが定義されている場合

メソッドやゲッターの実装:
インターフェースがメソッドやゲッターを定義している場合、これらは実装クラスで具体的に実装される必要があります。これには、適切なメソッドやゲッターをクラスに追加し、指定された動作を正確に再現することが含まれます。

④モデルへのゲッターやメソッドの追加

実装指示の適用:
モデルにメソッドやゲッターを追加する際には、特定の指示に従う必要があります。これは、クラスがインターフェースの要件を正しく満たすように保証するためです。たとえば、@freezedを使用する場合、生成されるモデルにカスタムゲッターやメソッドを追加する方法が特定されているはずです。

このように、インターフェースの要件に従い、それを実装することは、プログラムが型安全を保ち、予期される動作をすることを確実にするために重要です。適切なガイダンスに従ってインターフェースを実装することで、保守性が高く、エラーが少ないコードを作成できます。

補足) @freezedを用いて生成されたクラスに対し、@Withや@Implementsデコレータを使用できない場合について

@freezed アノテーションの特性

@freezedアノテーションは、Dartのコード生成ライブラリの一つで、主に不変のデータクラスを簡単に生成するために使われます。このライブラリは、データの一貫性と安全性を保つために、クラスの変更や拡張を制限します。

@With と @Implements の使用制約

① @With:

@Withアノテーションは、指定されたクラスの機能(メソッドやプロパティ)を別のクラスにミックスインするために使用されます。しかし、@freezedで生成されたクラスは拡張できないため、これらのクラスに対してミックスインを行うことはできません。

② @Implements:

@Implementsアノテーションは、指定されたインターフェースのメソッドを実装することをクラスに要求します。
しかし、@freezedによって生成されたクラスは実装や継承が禁止されているため、これらのクラスは新たなインターフェースを実装することができません。

設計の意図

このような制約は、@freezedが主にデータの不変性を確保することを目的としているためです。クラスを拡張したり、新たなメソッドやプロパティをミックスインしたりすることは、不変性の保証を脅かす可能性があるため、これを禁止しています。

開発者が取るべきアプローチ

もし@freezedを使用しているプロジェクトで、ミックスインや新たなインターフェースの実装が必要な場合、代わりにコンポジションを使用することが推奨されます。つまり、必要な機能を持つクラスのインスタンスを@freezedクラスのプロパティとして保持し、そのインスタンスを通じて機能を利用する設計を採用することです。

補足) 上記の制約を、別の言い方で言うと…

上記の制約を、別の言い方で言うと、
先程の(「おさらい( @With、@Implements )」の)コードについては、
GeographicArea クラス、House クラス、Shop クラス、AdministrativeAreaクラス
には、@freezed が付いておらず、Exampleには、@freezed が付いています。
故に、Exampleクラス中では、

Dart
@With<House>()
  @Implements<Shop>()
  @Implements<GeographicArea>()
  @Implements.fromString('AdministrativeArea<T>')
  const factory Example.city(String name, int population) = City<T>;

といった、使い方ができる、
しかし、(上記以外に、新規に、

Dart
@freezed
class newtest<T> with _$newtest<T> {}

というクラスを作成した場合には、その中で、

Dart
@freezed
class newtest<T> with _$newtest<T> {

  @With<Example>() //←この記述は間違い!書くことはできない(上記の制約)

}

というコードを、書くことはできない(上記回答にある、”制約”)のである、ということです。

(続きの記事はこちら)

コメントを残す